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「谷内六郎展覧会」 〜”マックロクロスケ”の視覚化〜

 「週刊新潮」の表紙絵で知られる画家・谷内六郎さん。素朴で郷愁を誘うその絵は、故人となられた現在でも多くの媒体で目にする事が出来る。カレンダー、ぬり絵の本、童謡CDのジャケット、何年か前インスタント・ラーメンのTVCMでもお見かけした様な気がするがこれは記憶違いかも知れない。こんな風に日常の何処かしこで目にする機会が多いだけに自分にとって六郎さんの絵はそれこそ、”あァあァあの絵ね・・・”的なものでしかなかった。それどころか、年配の方の懐古趣味に媚びを売っているかの様な拒否反応さへ感じていたのである。そんな自分が六郎さんの作品を改めて見直すきっかけになったのは、TVの美術番組で観た一枚の絵だった。
題名は「犬が沢山吠える夜」-1972.2/19

多分冬の空であろう月に照らされた寒そうな住宅地の夜。
町のあちこちで吠え出す犬達。
吠え先の夜空に暗躍しているのは山高帽にマントの怪人。
一件の家の中には床につき、布団をあご当たり迄掛けて不安そうな顔をした男の子がみえる。
”どうしてあんなに犬がたくさん吠えているのだろう・・・。”

この絵を観た時自分は、今迄人に説明出来なかった子供の頃の情感の様なものを初めて、具体的な形でみた気がしたのだ。それは「こんなことあったね〜」などと云うのどかなものでも、甘い懐かしさでもない。自分に専門的な美術論など語れる筈もないけれど六郎さんの絵の本質は、子供の頃に誰もが感じた、でも大人になった今では感じる事すら出来ない情感の表現にあると思う。

「ライトの中の幻想」-1973.10.18
夜 お父さんの運転する車のフロントガラスから見える次々と流れていく山道の木立の幻影。フクロウやコウモリ、いるはずのない怪しい人の影・・・。

「遠い知らない所の天気予報 沖の鳥島では風力6」-1975.11/13
星さへ見える夜。膝を立てて布団の脇に座り、遠く知らないところの気象情報を流すラジオに聞き入る不安気な男の子の背中。想像するのは暗く 荒れ始めた海。

「待とうよ」-1968.4.27
夕方 トンネルの向こうから鈴を鳴らしながら近付いて来る巡礼の人。
トンネルの中ですれ違わないよう、こちら側でじっと待つお姉さんと弟。
弟は姉のスカートをギュッと握り絞めている。

六郎さんの絵には こんな風にただ「郷愁」だけではない失ってしまった感覚を呼び覚ますものがあると思うのだ。単なる穏やかな遠い日の懐かしい記憶の断片を表現するなら、みんな笑顔であればいい。だが改めて数々の作品をながめてみると、描かれている子供たちは必ずしも笑ってはいない。むしろ不安気な表情の絵の方が多い気がする。幼いが故の想像力の限界の無さは、楽しいことよりむしろ、恐怖や不安をより助長するのではないだろうか。夜の闇や不審な音の恐怖 見知らぬ町や見知らぬ人への不安感。 子供の頃しか感じる事の出来なかった”肌感覚”とでも云うのかそんなものを、六郎さんは素朴な画風に柔らかく包んで見せてくれる。もし自分の様に、谷内六郎さんの作品を目にしながらこれ迄素通りして来た方がいらっしゃれば ぜひもう一度”じ〜っと”御覧の程を。
また六郎さんを御存知でない方、何だか谷内作品の”暗黒面”ばかり強調する様なおススメになってしまったけれど誤解無き様、深読みせずともまずはそのやさしい世界に触れてみて下さい。

*タイトル「谷内六郎展覧会」新潮文庫
(春)(夏)(秋)(冬・新年)(別巻 夢)(谷内六郎絵本歳事記)この六冊を総して、一般的には「谷内六郎展覧会全六刊」と呼んでいます。
前出の週刊新潮の表紙絵は元より、ヨーロッパやホノルルの旅日記、入院中の病床から描いたモノクロ画等、カラーページの豊富な楽しい内容ですが残念乍ら廃刊となっています。
また現在は発行元を(株)六郎工房に変えて同内容のものが発刊されていますがこちらも展覧会時の販売以外、ネット販売も書店での取扱いもされていない模様です。
かく云う私も最近、古書店にてようやく手にする事が出来ました・・・。

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谷内六郎オフィシャルwebサイト
 
仮称)横須賀市美術館
六郎さんのバーチャル・ミュージアムがあります。
絵は勿論、それに寄せられた御本人の文章も必見。

(バーチャル美術館→谷内六郎のアトリエから)

zizi’s Websight
管理人ziziさんが保管されている週刊新潮の表紙をスキャンして年代別に紹介されています。
(Zさん 快くリンク御承諾いただき、ありがとうございました。)
(トップ・ページ→週刊新潮)

| イラスト・ゲージツ | 22:08 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

谷内六郎
さんの掲示板から飛んできました。
開設おめでとうございます。
数年前、たまたま研究会で秋田に行ったとき、偶然秋田市内で谷内六郎展が開かれていました。
新潮の表紙になった「原画」がたくさん展示されていて感動しました。
「ふるさと」が無くなってしまったこの現代、彼の絵の中には、確かなふるさとの原風景がありますね。

| Crane | 2006/06/18 21:26 | URL | ≫ EDIT

Crane 様
御訪問下さりありがとうございます!
当blog初のコメントをいただき感激しております。
原画を御覧になられたそうで羨ましい限りです・・・。
まだまだ未熟者ですがよろしければ今後共宜しくお願い致します。

| hawk | 2006/06/19 00:09 | URL | ≫ EDIT

見ました。
谷内六郎さんの絵が好きだったとは。たしかに原風景は田舎に似てるかも。

| せいちゃん | 2006/06/23 22:25 | URL | ≫ EDIT

せいちゃんちゃん
 せいちゃん 御来訪ありがとうございます。

>たしかに原風景は田舎に似てるかも

因みに自分も子供の頃 ”まっくろクロスケ”(知ってるよね)を
見た事があります。田舎では天気の良い日の風物詩でした。(!?)
詳細その内UP致します。

| hawk | 2006/06/25 19:36 | URL | ≫ EDIT















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